普通の人は、変身なんてしない。
　ましてや、狐になんてならない。
　だから、狐になれる私は、普通じゃない。
　人じゃ、ない。

・・・

　――少し前まで。私は、狐に変身する自分の能力が嫌いだった。
　私が人でない――と言うと、語弊がある気もするけれど――と知った時は、酷くショックを受けた。
　だから、変身能力が嫌いだった。
　変身すると、自分が人でないという事実を、強く感じてしまうから。

　“仲間”の多い環境に移って、多くの“仲間”の姿を見て。
　自分だけじゃないと思って、割り切った……つもりだった、けれど。
　知らず知らず、自分の中でこだわりを捨て切れていなかった。
　力を捨てて、ただの人になりたいとさえ思っていた。

　――今は、自分の能力を疎ましいとは思わない。
　この力が、運命の糸を繋いでくれたから。
　この力も、私の一部だから。
　人とか何とかじゃなく、皆は“私”と一緒に居てくれるから。

　変身能力、今は嫌いじゃない。
　これも“私”なんだって、認められたから。
　……それに――

　――ちょっと素直になって、ちょっと大胆に甘えても……恥ずかしく、ないから。