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TW2:シルバーレインのキャラに関するページ。ピンとこなかった人は今すぐ戻った方が良いかと…
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―ターニング・ポイント。
今思えば、ここがそうだったのだろう―

・・・

「!!」
 車輪が、薫に向かい転がる姿勢をとる。徐々に回転速度を上げ、一撃で仕留めんと炎を吹き上げる。
(…こ、殺される…!)
 意識はある。このままではまずいという認識もある。だが、身体が、追いつかない。
『ユルサナイィィィィィ!!』
 高速で迫る車輪。視界を覆わんばかりの炎が、あっという間に薫を包む。―はずだった。
「…え」
 何かが、車輪を押しとどめている。その『何か』は人影に見えるが、それにしてはあまりにも細く、時折見えるそれは肌にしてはあまりにも白く―
「―アニキ!」
 白骨へと変わり果てた、兄の姿。人としての面影を僅かに残す程度となった『それ』を見ても、薫は『それ』が自分の兄であると直感した。
(―薫!逃げろ!)
 兄が、そう言っているように感じる。声は無いが、そう感じる。しかし―だからこそ、薫は動けない。
「―駄目だよ!アニキを置いて逃げるなんて…!」
(―薫!)
 兄が叱るような視線―と言っても、眼は無いが―を向ける。それで気が逸れたのか、車輪の炎の勢いに負け、兄が吹き飛ばされる。
「アニキっ!!」
『ツブスゥゥゥゥゥ!!』
 押さえを失った車輪が再び加速を始め、迫る。
(アニキ、アニキ!骨になっても、助けてくれた…僕は―)
「―死んで…たまるかあああっ!」
 死してなお、兄に守られた―そんな命を、失う訳にはいかない。本能レベルでそう思った薫に、二つ目の奇跡が起こる。
 目にも止まらぬはずの、車輪の突進。しかし薫は身体をずらし、紙一重で避ける。
 そして、すれ違いざま。
「はああっ!」
 身体の動くままに任せ、吐息を吹きかける。パキ、と小さな音がして、車輪の軸の一本が炎ごと凍りついた。
『ツメタイィィィィィ!』
 のたうち回るかのように、その場をぐるぐる回り始める車輪。それを後目に、薫は自身の体の変化にようやく気がついた。
(…何だ、これ)
 黒かった薫の髪は藍色を帯び、瞳には銀の輝きが宿る。自信の周囲はもちろん、口からもれる息はまるで氷のように冷たく―そう。薫の中の雪女の血が、目覚めたのだ。
 しかし、自身の身体の変化に戸惑う暇は無い。
『ツメタイィィィィィ!ユルサナイ、ツブス!ツブスゥゥゥゥゥ!!』
 車輪が体勢を立て直す。先程はたまたま避け、カウンターできたが、次もそう上手くいくとは限らない。薫は意を決し、身構え―

「―そんなに冷たいなら、温めてやろう。―殺れ」
「―妖力解放!奥義…紅蓮撃!」

 身構えたが、それは無駄に終わる。三つ目の奇跡が起こった―更なる闖入者が、車輪に炎の塊を叩きつけたからだ。
 爆発に近い音の後、車輪の悲鳴が聞こえ、徐々に遠ざかる。
「逃げたか。追え」
「え、さっきから指図ばっか…あいや行きます行かせてください待てやゴルァ!!」
 突然の事に呆気にとられる薫を守るように、白骨が立ちはだかる。その先に見えるのは―長い髪の、妙齢の女性。
「ん?…ほう、面白いな。そっちの骨は意志を持っているようだし、それに守られてる童は…化生の類に近い気を感じるな。冷たい気…さしずめ、雪女の血か」
 女性が笑みを浮かべると、奥から人影が現れる。どうやら先程車輪を追いかけて行ったらしい、鬼面の男だ。
「スマン、逃がした」
「役立たずめ」
「ひでえ!?」
 キョトンとするしかない薫を置いてけぼりにして、髪の長い女性が話をまとめる。
「説教は後だ。ここにいても仕方ない、場所を移すぞ。もしかしたら、さっきの火車もその辺にいるかも知れん」
「へいへい。んじゃ、行きますか」
 くるりと踵を返す二人だが、女性が不意に振り返り薫に声をかけた。
「雪の童よ。もし興味があるなら、銀誓館という学園を訪ねるといい。その力と、そこの骨…他あらゆる事を、まとめて解決できるかも知れん」

 そうして後には、力に目覚めた薫、骸となった兄、消炭となった男、そして―静寂だけが、残された。

(つづく)
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このブログを管理する者であり、柚之葉・薫(b68352)と鬼頭・鋼誠(b70561)と眞我妻・姫香(b76235)と玉城・曜子(b76893)の背後に当たる人。大体男2人に滅多打ちにされてる。
※このブログで使用されるキャラクターイラストは、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、管理人『蛍月』が作成を依頼したものです。  イラストの使用権は管理人『蛍月』に、著作権は各イラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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