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TW2:シルバーレインのキャラに関するページ。ピンとこなかった人は今すぐ戻った方が良いかと…
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狂気が運命の糸を弄ぶのか。
運命の糸が狂気を齎すのか。

・・・

●立ちはだかる者
「邪魔なのは貴女の方です」
 女の放つ幻楼火をかわすように下がり、能力者達は力を解放する。
 この先にあるのは有益、無益ではない。だから……
 静かに、だが毅然と女へと言葉を投げかけ――九頭龍・蓮汰(風の十二方位・b73547)が、吼える。
「……道を、開けろ!」
 力の解放と共に金色の輝きを放った瞳が、向かって右側の獣を捉える。気魄と共に撃ち出された衝撃波が、獣を激しく打ち据えた。
「蓮汰くん、そちらは頼んだ」
 同時に飛び出すは、イクス・イシュバーン(高校生魔剣士・b70510)。
「先輩、一気に畳み掛けましょう」
「わかった」
 現場判断。右側の獣を蓮汰に任せ、功刀・伊知郎(深紅の錬士・b65782)と共に反対側の獣へと、闇のオーラを纏った剣を振るう。
 一刻も早く道を切り開き、助けを待つ者達と合流する。逸るその気持ちを抑え、意志を刃に乗せ獣を切り裂く。
 先を急ぐ気持ちは、前に立つ者だけのものではない。
「なぜ貴女は私達の邪魔をするの?この先には何も無いんでしょ?」
 事が起こるまで気がつけなかった自分に腹を立てる、その時間すらも惜しいと焦る嘉凪・綾乃(緋楼蘭・b65487)は、指先まで神経を張り巡らし焦りを封じ込め、手にした結晶輪を女へと投げつける。
「ええ、そうよ。敢えて繰り返すけど、あなた達にとって有益なものは何も」
「私達はこの先にあるものを知ってるわ」
 結晶輪をかわす女の言葉を遮るように、言葉を紡ぐ。
「曜子ちゃん達がいる事も、そして彼女達を捉える存在がいる事も」
 あらそうなの、とさも残念そうに肩を竦める女。
(助けなくちゃいけない人が待ってる、今はそれだけが私を動かしてる)
 目的も正体も見えてこない女を油断無く見据えながら、渡会・綾乃(鬼鋼蜘蛛の巫女・b74204)が全体を見渡せる位置へと下がる。
(こんな所で、歩みを止める訳にはいかないのよ)
「――速さは力、ってどこかで聞いたな」
 急ぐからこそ、冷静に。そんな二人の想いに応えるように、志方・雪子(友待・b43513)が、モーラットのすずを後方に下げ自身の影を伸ばす。
「今日もそうだって事だ」
 伸びた影は手の形をとり、イクスと伊知郎が斬りつけた獣へと襲いかかる。しかし、獣はその姿をぐにゃり、と変え影の手をかわした。
 それを後目に、女の眼前へと飛び出したのは御津乃廉・灯(白風纏う吸血児・b51863)。二振りのチェーンソーが獣の咆哮が如き音と共に振り下ろされるが、女は手に持ったナイフ一本でそれを受け止めてみせる。
「本当に……すぐ、会ったな」
「そうね、運が良かったのかしら?」
 女がナイフに力を込め、灯を押し返す。そこを狙い澄ましたかのように放たれたフォア・トンユエ(正しき闇の導き手・b61331)の矢を、返す刃で叩き落とした。
「ふふ……何か訊きたい事がありそうね、フォア・トンユエさん?」
 女の言葉に、僅かに目を細めるフォア。何故、名前を知っているのか――それも気になるが、それよりももっと訊きたい事がある。
「……あなたは何者?玉城さんと、何か関係が?」
「あら、ストレートね……答えなかったら答えなかったでしょうがない、とでも思っているのかしら?」
 くすり、と狂気じみた笑みを強める女の様子に、フォアを始め説得を試みようと考えた面々は寒気を覚える。
 それはまるで、心を読まれているような――
「あら、他事を考えていて良いの?」
 女の言葉にはっとする。刹那、抑えにかかった前衛を無視するかのように、二匹の獣が灯とフォアにコールタール状の何かを飛ばしてきた。
 すんでの所で粘液をかわすと、べちゃりという湿った音と共に粘液が地面に落ち、その下から煙のようなものが立ち昇る。
「ふふ、危なかったわね……この子たち、灯君に親を倒されてね?やる気満々なのよ」
 灯の脳裏に、少し前に倒した妖獣の姿がよぎる。
「ああ、質問に答えていなかったわね……でも、その質問に答える必要があるかしら?」
 女が徐にナイフを構えると、禍々しい形状のそれがいやに鈍く輝いたように感じた。
「きっと、あなた達が考えている通りよ」
 その時、女の挙動に注視していたフォアがある事に気がついた。
 ナイフは単に鈍く光っているのではなく――実体のない弦らしきものが浮かんでいる、その事実に。
「……いけない!皆、聞いては――」
 フォアの忠告は、常識を破壊する堕天使の如き楽曲にかき消された。

●精神を蝕む者
 抑えていた逸る気持ちが、怒りへと変わり増幅されていく。
「このっ……!」
 眼前の獣へと連続蹴りを浴びせる蓮汰の脇をすり抜け、二人の綾乃が放つ結晶輪と子安貝が女へと一直線に飛ぶ。しかし、それは容易く弾かれてしまう。
「ふふふ……怒りに任せた攻撃は、分かりやすくて良いわね。『読み』の力を使うまでもなく、簡単に防御できるわ」
「くっ……」
「綾さん、落ち着いて!」
 イクスの召喚した鉄の処女が獣を飲み込み、内部に生えた無数の棘が幾重にも獣を貫く。鉄の処女の消滅に合わせて伸ばされた雪子の影が、今度こそ獣を捉え切り裂いた。
「フリッカークラブか……」
「予想は大体当たりだったみたいね、志方雪子さん?どうせなら、より具体的な考察もあれば花丸だったかしら」
 ち、と舌打ちで女の笑みに答える。禍々しい形状のナイフ――惨殺ナイフをぺろりと舐める余裕たっぷりの女の姿に、サタニックビート無しでも多少の苛立ちを覚える。
「志方、今は抑えろ。――綾乃も、自分を見失うな」
 努めて冷静に、低い声で諭す伊知郎。「大丈夫だ」と手を上げる雪子を横目に黒影剣を放つが、まるで水を切ったように手ごたえが無い。
 その一方で、怒りに我を忘れ女に斬りかかる灯。チェーンソーの刃が女の肩口に食い込むが、鋸刃の回転速度が上がるより早く抜かれてしまう。
「……何故、玉城さんを狙う?」
 フォアは怒りを抑え、少しでも情報を引き出そうとするが、
「何故だと思うかしら?話してもいいけれど、きっとあなた達には理解できないわ」
さすがに都合よく全て訊き出せるという事は無く、幻楼火に惑わされ女を睨むしかない。
 なかなか斬れない獣と、話の通じない女性。手ごたえが無く、精神的負荷が大きいのはどちらも同じだが、どちらがより厄介だろうか――

●迷える者
 嘉凪・綾乃が我に返った時、その目に飛び込んできたのは、獣の粘液をまともに浴びた蓮汰の姿だった。
「くっ……この程度!」
 蓮汰は怯まない。ボロボロになり回転動力炉の止まった手袋を一瞥すると、構わず一歩踏み出す。
 武器の力が失われても関係ない。己の経験が確かな力となり、踏みしめられた足元から衝撃波となって爆ぜ、獣を吹き飛ばした。
「――回復を!」
「任せて!」
 ようやく冷静さを取り戻した嘉凪・綾乃が、獣を斬り裂くイクスの要請に応え慈愛に満ちた舞を踊る。一歩、二歩と地面が踏まれる度、癒しの力が溢れ清浄な気が辺りを包む。渡会・綾乃は清浄な気により精神を鎮め、青白い月光を獣へと放つ。剣士達により幾度も斬りつけられていた左の獣は、月光を浴びると凍結し、そのまま粉々に砕け散った。
「残るは右か」
 伊知郎と雪子の影から同時に魔手が伸び、残る獣を引き裂いた。

「あら、なかなかやるじゃない」
 獣が翻弄される様を見てなお、女は余裕の笑みを崩さない。そんな女の前で、冷静さを取り戻した灯が不意に武器を降ろす――ただし、視線は真っすぐ女を捉えたまま。
「なぁ……なんで、俺に会いに来た?」
 ん?と女性が首を傾げる。
「俺に……何か、関係あるんだろ?」
「さあ……何のことかしら」
 女の様子に、若干ながら変化が現れる。それは女の反応に気を配っていた嘉凪・綾乃とフォアが辛うじて分かる程度の僅かなものであったが、女が初めて見せた変化には違いない。
「……答えられないのか?」
 女の見せた変化を逃すまいとフォアの重ねた言葉に、ついに女の顔から笑みが消える。だが、消えた笑みの後に残ったのは、憤りではなく――むしろ、迷い。
 嘉凪・綾乃の視界の端に、蓮汰が獣の伸ばした身体の一部を叩き落とし、イクスが再び召喚した鉄の処女に飲み込まれた獣を蹴り飛ばす姿が映る。女の余裕が崩れた、狙うなら今――必要な情報を訊き出すべく、ただ静かに言葉の槍を放つ。
「貴女は何なの?この先にいるゴーストの仲間?それとも、単に私達が気に食わないだけ?」
「……そうよっ!」
 女が吼える。まるで呼応するかのように響くのは、獣の呻き声。後に残ったのは、再度放たれた二本の魔手に引き裂かれた獣の残骸と――蹲る女。

●道を見失った者
「そうよ、私はあなた達が気に食わない!」
 今までの様子が嘘のように、女が取り乱す。
「あの子の心を読んだ時……あの子の中にあったのは、自分の信じていたものが虚像だった事の悲しみ!そしてあなた達との楽しげな日々!私はそこに居ない……私は、もう手を伸ばしてもそこに届かない!」
 女の瞳からは涙が、目のあった痕からは血が流れ出す。
「私には届かない!なら、あの子に届く位置に来てもらうまで……!だから私は奴に全て委ねた!私はただ、あの子と平穏に暮らしたかった!あの子をもう一度抱きしめたかった!」
 狂気。
 目的を果たすことだけを考えた結果、その過程に矛盾が生じてしまう。
 この女性も、また――
「分かってるわよ!間違ってる!でも、私には何が間違っているか分からない!何故!?何故あの子の側に、私は……!」
 その様子に、灯が口を開く。
「おまえ……ようこの、かあちゃ……なんだろう?まだ……間に合うから、助けに……行こう」
 え、と固まる女。揺れる金の瞳からは、狂気の色が消えている。
「ごーすとでも……きっと、なんとかなる。ようこを……好きな気持ち、俺たちと……変わらないんだろ!」
 ゴースト。その言葉をオウム返しに呟いた女は、再び様子が豹変する。
「ふ、ふふ……」
 体を起こし、代わりに俯いたままゆらりと立ち上がる。
「……そうよ、私はもう生きていない。でも、死に切れてもいない。いっそ、完全に死んでしまえばよかったのに」
 女の体が震える。表情が見えないため、それが何のための震えかを知る事はできない。
「完全に死んでしまえば、全く手出しできない。その方が良かった。なまじ死にきれていないせいで、こうして手を伸ばそうとして……結局、私自身は何もできない」
 ナイフを構える。なのに、と女はそのまま続ける。
「何ができると言うの?私とあの子の住む世界は、越えられない壁に遮られてしまった。私はもう黄泉帰れない。壁を越えるには、あの子が死ぬしかない。だから、私は全てを奴に――」
 女が顔を上げた。涙の跡と血の跡が、狂気の笑みを彩る。
「あなた達は邪魔。私の目的を果たすために、まだまだここは通せない!」

 女のナイフに、再びエネルギーの弦が現れ――

●解き放たれた者
 怒りと共に振るわれた詠唱兵器が、女を貫く。力なく木に寄りかかった女は、それでもなお笑みを浮かべていた。
 単に足止めをしたいならば、幻楼火なり、使えるならショッキングビートなりを使えば済む話だったはずだ。
 なのに何故、女はサタニックビートを――その意味は誰もが考えたが、誰も口にはしなかった。
「……あぁ。そういえば……」
 今にも途切れそうな声で、女が言葉を紡ぐ。
「灯君の質問、ちゃんと答えて、なかったわね……でも、時間が無いから……宿題に、するわ」
「……しゅく、だい?」
「えぇ……また、会う時に……答え、教えてね……強いて言うなら、ヒントは……親心、かしら……」
 女は、それきり喋らなかった。

 先を急ごう、と誰からともなく呟きが漏れる。女に対し思う事はそれぞれだが、今は一刻を争う。
 人、来訪者、そしてゴースト。
 共存の可能性と、相容れない存在である事実と。何ら変わらない本質と、折り合わぬ性分と。
 ぶつかり合って得られた結果は、絡み合う運命の糸の導きなのか。
「……これで、よかったのか?」
「己だけの最善を求めて行動してバカを見る――そんなの、誰だって一つや二つあるもんだ」
 助けられなかった者と、どこかやり切れない思いを残し、そして――
(待っててね、すぐに行くから……)
 助けられるかも知れない者の元へ、ひた走る。

 昏き穴は、まもなく現れた。

・・・

冒険結果:成功!
重傷者:無し
死亡者:無し
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男性
自己紹介:
このブログを管理する者であり、柚之葉・薫(b68352)と鬼頭・鋼誠(b70561)と眞我妻・姫香(b76235)と玉城・曜子(b76893)の背後に当たる人。大体男2人に滅多打ちにされてる。
※このブログで使用されるキャラクターイラストは、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、管理人『蛍月』が作成を依頼したものです。  イラストの使用権は管理人『蛍月』に、著作権は各イラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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