TW2:シルバーレインのキャラに関するページ。ピンとこなかった人は今すぐ戻った方が良いかと…
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彼女は、奈落からの呼び声に招かれた。
彼女は、奈落から叫ぶ事は出来るのか。
彼女は、奈落から叫ぶ事は出来るのか。
・・・
薄暗く、冷えた空気の淀む、山中の洞窟の奥深く。曜子は、冷たい土を気にするでもなく、古びた小さな祠の前に正座していた。
――否、“気にするでもなく”という表現は正しくない。
彼女の金色の瞳には生気が無く、まるで人形の顔に嵌められたガラス玉のようだった。今の彼女に、自分がどこでどういう風にしているかを気にする程の意思が残っていないのは、傍目から見れば明らかだろう。
「……」
ただぼんやりと祠を見つめるだけの曜子は、能力者が見れば偽身符のようだと感じたかも知れない。
そんな彼女が、不意に――しかし、のろのろと――顔を上げる。
『今日で三日目か。勤勉だな』
曜子の頭の中に直接響くように、厳かな声が聞こえる。
「……はい」
曜子がぼんやりとした表情のまま答える。
「はやく、ちからをすてて……ただのひとに、なりたいですから……」
二日前。曜子がこの洞窟を訪れたのは、喫茶店で女性とあってから感じていた、胸の蟠りの正体を確かめるためであった。――少なくとも、その時は。
「人にあらざるものへ人の身体を与える、古き儀式の祠……」
簡単な地図を辿ると、そこにあったのは小さな洞窟であった。人が一人入っていける程度の大きさで、入口付近ですら中を見通すことができない程、妙に暗い。
「くだらない、ただの与太話……そう思う、けど」
彼女はイグニッションカードを掲げ、力を解放する。
「一応確かめるだけなら……タダ、よね……?」
愛用の機銃付き月琴の感触を確かめると、曜子は洞窟の中へと踏み込んで行った。
しばらく進むと、少し開けた場所に出た。人が三人並べるくらいのその空間は、来た道以外にどこにも繋がりが無く、行き止まりとなっていた。
そして、その空間の奥。
「……これかしら」
壁際にひっそりと、小さな祠のようなものが設置されているのが見える。
『何者だ』
曜子が祠に一歩近づくと、空間全体の温度が下がるような感覚と共に、厳かな声が聞こえた。しかし、周囲を見回しても声の主は見当たらず、頭の中に直接声が届けられているように感じる。
「そういうあなたこそ何者ですか?姿も見せずに失礼な」
月琴を構える曜子。
『我に臆せず説教か。面白い』
声の主は姿を見せないが、笑っている気配だけは感じる。その気配に嫌悪を感じる曜子の心中を知ってか知らずか、声の主が言葉を続ける。
『我を恐れぬその態度、そしてその妖力。お前も、真なる人に憧れ人ならざる力を捨てる、哀れな来訪者か』
「何をっ……」
表情の動きが少ないはずの曜子の目が、やや鋭くなる。だが、それは侮蔑の言葉への怒りより、心の中の触れられたくない部分を触られたような、そんな感覚への動揺や焦りが出た為であった。
対して、声の主は鼻で笑うような声を出す。
『そう怒るな。我の許へは、そのような者ばかり訪れる。いい加減飽き、言葉も悪くなるというもの』
だが、と声の主は続ける。
『その想いは分からぬでもない』
「え……」
不意に声のトーンが落ち、曜子はつい反応してしまう。
『我もまた力を持つが故に、このような場所に封じられ……人や来訪者の願いを叶える、それだけを使命として課せられた』
もの悲しげな声に、つい耳を傾けてしまう。
『願いを叶え続ければきっと、いつか解放され……力を捨て、ただ平穏に暮らせると……それだけを信じ、我が力を使い続けた』
語るような、囁くような言葉に、つい聞き入ってしまう。
『ただ平穏に、ただ人として……来訪者たるお前も、そう考えたのであろう?』
包み込むような空気に、つい身体を預けてしまう。
「わた、し、は……」
『話してみよ。我は、きっとお前の力となろう』
いつの間にか、曜子の中から抵抗の意志は無くなっていた。
しばらくして。
曜子は自身の生い立ちと想いを声の主に打ち明け、どこか遠い目で祠を見つめていた。
『話は分かった』
やがて、声の主はそう告げる。
『さぞ辛かったであろう。しかし、もう思い悩む事は無い』
その声に、ほくそ笑むかのような気配が滲んだが――
『これから、日々ここに通い、我に祈りを捧げよ。お前の祈りが、我の力に目的を与える』
――曜子は、もはや声の主の真意に気がつかない。
『目的を持った力は、きっとお前のために働くだろう……お前の望む未来のために、な……』
時は現在に戻る。
生気の無い瞳のまま、祠に何やらぶつぶつと呟き続ける曜子。
その背後に、三つの人影が暗闇から現れる。
「こんな所に居たのか」
その内の一人のものと思われる青年の声が、曜子の小さな背中に投げかけられる。
「……なにしにきたんですか」
緩慢な動作で曜子が振り返り、首を傾げる。
「……わたしは、いそがしいんです……ごようがあるなら、あとにしてください……」
「悪いけど、そういうわけにもいかないんだよね……」
最初の青年の声よりやや高い、少年の声が響く。
「ここは……玉城さんに、良い影響を及ぼさない……だから、連れて帰るように、頼まれたんだ……」
「……そうですか……」
反応はするが、曜子の声も瞳も、心ここに在らずといった様子を顕著に表している。
「……もうすこししたら、かえりますから……ちょっと、まっててください……」
まるで「応じるつもりは無い」とでも言いたげに、身体が僅かに揺れる以外の反応が無い。
「……たくさん、おいのりをして……はやく、ひとにならないと……」
「――そうかい」
黙って聴いていた青年が、不意に口を開く。
「姫香」
「かしこまりました」
姫香と呼ばれた少女が、目を伏せ頷く。姫香はゆっくりと曜子の目の前まで近寄り、そして、
――ぱんっ。
乾いた音が、洞窟に響いた。
薄暗く、冷えた空気の淀む、山中の洞窟の奥深く。曜子は、冷たい土を気にするでもなく、古びた小さな祠の前に正座していた。
――否、“気にするでもなく”という表現は正しくない。
彼女の金色の瞳には生気が無く、まるで人形の顔に嵌められたガラス玉のようだった。今の彼女に、自分がどこでどういう風にしているかを気にする程の意思が残っていないのは、傍目から見れば明らかだろう。
「……」
ただぼんやりと祠を見つめるだけの曜子は、能力者が見れば偽身符のようだと感じたかも知れない。
そんな彼女が、不意に――しかし、のろのろと――顔を上げる。
『今日で三日目か。勤勉だな』
曜子の頭の中に直接響くように、厳かな声が聞こえる。
「……はい」
曜子がぼんやりとした表情のまま答える。
「はやく、ちからをすてて……ただのひとに、なりたいですから……」
二日前。曜子がこの洞窟を訪れたのは、喫茶店で女性とあってから感じていた、胸の蟠りの正体を確かめるためであった。――少なくとも、その時は。
「人にあらざるものへ人の身体を与える、古き儀式の祠……」
簡単な地図を辿ると、そこにあったのは小さな洞窟であった。人が一人入っていける程度の大きさで、入口付近ですら中を見通すことができない程、妙に暗い。
「くだらない、ただの与太話……そう思う、けど」
彼女はイグニッションカードを掲げ、力を解放する。
「一応確かめるだけなら……タダ、よね……?」
愛用の機銃付き月琴の感触を確かめると、曜子は洞窟の中へと踏み込んで行った。
しばらく進むと、少し開けた場所に出た。人が三人並べるくらいのその空間は、来た道以外にどこにも繋がりが無く、行き止まりとなっていた。
そして、その空間の奥。
「……これかしら」
壁際にひっそりと、小さな祠のようなものが設置されているのが見える。
『何者だ』
曜子が祠に一歩近づくと、空間全体の温度が下がるような感覚と共に、厳かな声が聞こえた。しかし、周囲を見回しても声の主は見当たらず、頭の中に直接声が届けられているように感じる。
「そういうあなたこそ何者ですか?姿も見せずに失礼な」
月琴を構える曜子。
『我に臆せず説教か。面白い』
声の主は姿を見せないが、笑っている気配だけは感じる。その気配に嫌悪を感じる曜子の心中を知ってか知らずか、声の主が言葉を続ける。
『我を恐れぬその態度、そしてその妖力。お前も、真なる人に憧れ人ならざる力を捨てる、哀れな来訪者か』
「何をっ……」
表情の動きが少ないはずの曜子の目が、やや鋭くなる。だが、それは侮蔑の言葉への怒りより、心の中の触れられたくない部分を触られたような、そんな感覚への動揺や焦りが出た為であった。
対して、声の主は鼻で笑うような声を出す。
『そう怒るな。我の許へは、そのような者ばかり訪れる。いい加減飽き、言葉も悪くなるというもの』
だが、と声の主は続ける。
『その想いは分からぬでもない』
「え……」
不意に声のトーンが落ち、曜子はつい反応してしまう。
『我もまた力を持つが故に、このような場所に封じられ……人や来訪者の願いを叶える、それだけを使命として課せられた』
もの悲しげな声に、つい耳を傾けてしまう。
『願いを叶え続ければきっと、いつか解放され……力を捨て、ただ平穏に暮らせると……それだけを信じ、我が力を使い続けた』
語るような、囁くような言葉に、つい聞き入ってしまう。
『ただ平穏に、ただ人として……来訪者たるお前も、そう考えたのであろう?』
包み込むような空気に、つい身体を預けてしまう。
「わた、し、は……」
『話してみよ。我は、きっとお前の力となろう』
いつの間にか、曜子の中から抵抗の意志は無くなっていた。
しばらくして。
曜子は自身の生い立ちと想いを声の主に打ち明け、どこか遠い目で祠を見つめていた。
『話は分かった』
やがて、声の主はそう告げる。
『さぞ辛かったであろう。しかし、もう思い悩む事は無い』
その声に、ほくそ笑むかのような気配が滲んだが――
『これから、日々ここに通い、我に祈りを捧げよ。お前の祈りが、我の力に目的を与える』
――曜子は、もはや声の主の真意に気がつかない。
『目的を持った力は、きっとお前のために働くだろう……お前の望む未来のために、な……』
時は現在に戻る。
生気の無い瞳のまま、祠に何やらぶつぶつと呟き続ける曜子。
その背後に、三つの人影が暗闇から現れる。
「こんな所に居たのか」
その内の一人のものと思われる青年の声が、曜子の小さな背中に投げかけられる。
「……なにしにきたんですか」
緩慢な動作で曜子が振り返り、首を傾げる。
「……わたしは、いそがしいんです……ごようがあるなら、あとにしてください……」
「悪いけど、そういうわけにもいかないんだよね……」
最初の青年の声よりやや高い、少年の声が響く。
「ここは……玉城さんに、良い影響を及ぼさない……だから、連れて帰るように、頼まれたんだ……」
「……そうですか……」
反応はするが、曜子の声も瞳も、心ここに在らずといった様子を顕著に表している。
「……もうすこししたら、かえりますから……ちょっと、まっててください……」
まるで「応じるつもりは無い」とでも言いたげに、身体が僅かに揺れる以外の反応が無い。
「……たくさん、おいのりをして……はやく、ひとにならないと……」
「――そうかい」
黙って聴いていた青年が、不意に口を開く。
「姫香」
「かしこまりました」
姫香と呼ばれた少女が、目を伏せ頷く。姫香はゆっくりと曜子の目の前まで近寄り、そして、
――ぱんっ。
乾いた音が、洞窟に響いた。
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ここの管理人
HN:
蛍月
性別:
男性
自己紹介:
このブログを管理する者であり、柚之葉・薫(b68352)と鬼頭・鋼誠(b70561)と眞我妻・姫香(b76235)と玉城・曜子(b76893)の背後に当たる人。大体男2人に滅多打ちにされてる。
※このブログで使用されるキャラクターイラストは、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、管理人『蛍月』が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は管理人『蛍月』に、著作権は各イラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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